SPECIAL
オフィシャルリレーインタビュー

――17年前のリャンハとシャトーに一体何があったのか、リャンハ少年とは一体何者なのか。気になる方も多かったと思いますが、ここに来てようやく謎の一端が明かされました。
皆さん、こっち(リャンハ少年)が本物のリャンハと知ってきっと驚かれたのではないかと思います。じゃあリャンハ、お前は一体誰なんだと(笑)。なぜリャンハの名前を騙っているのか。新たな疑問も沸いてきますが、何よりもリャンハ少年がすごくいい子なのにいろいろと巻き込まれてしまって、ちょっとかわいそうでした。
断片的に描かれていたリャンハ少年の過去がここにきてようやくはっきりと描かれ、「リャンハ」という名前のルーツと、シャトーとリャンハの今に至る過去が見えてきたことで、終わりが近づいているなと実感しています。
――増田さんはリャンハ少年をどんな人物だと捉えていますか?
ドニーへの忠誠心と素朴さがリャンハ少年の魅力だと感じました。知らず知らずのうちに大事件を起こしてしまったわけではなく、あくまでも正義感をもって信じる人のために行動した結果、こうなってしまった。どういう過程があってこの性格になったのかはわかりませんが、その意志が魅力的に見えました。
ドニーのもとにはニッカやジノンのような“ヤバい奴”がたくさんいますが、リャンハ少年は心優しく、正義感に溢れていますよね。少なくとも思いやりのある子なのは確かですし、ニッカのようにスレた感じにならず、ずいぶん素直に育ったなと感じました。この作品では数少ない、いい子です。
――リャンハとシャトーとのやりとりを見ても、すごく気遣いができる子だなと感じました。
任務に忠実なだけであれば、そこまで気を遣えないですからね。そういった意味では、リャンハ少年の優しさがリャンハにも影響を与え、「リャンハ」の名前を名乗るくらい彼に特別な感情を抱くようになったのかなと思います。実は原作を読んでいるときは、リャンハ少年に対して特別何かを思うことはなかったのですが、全話をアフレコしてみて、すごく愛おしく感じるようになりました。
――増田さんはリャンハ少年を演じる上で、どういったことを大事にされましたか?
僕が原作から感じ取ったものと監督をはじめとする制作スタッフ皆さんがアニメで表現しようとしている内容に若干の違いがあったので、音響監督さんと話し合いを重ねて演じさせていただきました。
――それはどういった違いだったのでしょうか?
原作を読ませていただいたときに、リャンハ少年は純朴ではあるんですが、同時に怖いもの知らずの一面があって、それが一周回って狂気になっているような印象を受けたんです。それに対して、アニメはどちらかというと弱気な部分を強調するような演出だったので、そこは少し調整しながら演じました。
素朴に気弱に、という感じだったよね。
そうですね。素朴に気弱に、もう少し声を高く、というディレクションをいただいて。朴訥とした感じにすると声色を作るのが難しいので、なかなか大変ではありました。
――第11話はお二人の掛け合いも多かったです。
掛け合いといっても、リャンハはこの頃からあまり感情表現をしないので、たくさん話しかけてくれるリャンハ少年に申し訳なかったです(笑)。
特に反応がないですからね(笑)。それでも話しかけ続けるのがリャンハ少年らしいところなのかなと思います。
ただ、リャンハは表には出しませんが、何か思うところがあるからこそ行動をともにしたのかなとも思うんです。誰かをかばうよりも見捨てるタイプなのに、そうはしなかった。短い期間でも特別な感情を抱いたのかなと思います。
――大人になってからのリャンハに比べて、やや迂闊なところも印象的でした。それこそ、拳銃に弾が入っていないとか。
そういった部分も含めて、リャンハ少年のほうが大人な面があるんでしょうね。
思ったんですが、あれは本当に弾が入っていなかったんですか?
そういうブラフでリャンハを動揺させた、と。
僕はそうだと思いました。
確かに、どっちだろうね。リャンハ少年は純朴な子だし、銃を扱うこと自体、怖いと思っている節もありそうだから弾を抜いていたかもしれないし……。
そうですね。ただ、ドニーの配下なのでいろいろ叩き込まれているようにも見えるんです。大義のためには行動できる少年なので、いろいろ想像してしまいました。
――リャンハ少年は、リャンハのことをどんなふうに見ていたと思いますか?
特別な存在というよりは、放っておけないタイプだったんでしょうね。二人の間にもう少し時間があれば、なぜ放っておけないのかに気付けたり、こうしてあげたいと思うようになったりと、かけがえのない相手になっていたのかもしれません。でも、その入り口で終わってしまったのがこの二人の関係だった。リャンハ少年からすると、どうして一緒に行動するようになったのか、納得するための時間はなかっただろうなと思います。
そこがリャンハとの違いだよね。
リャンハはリャンハ少年と出会い、別れたあとに、たぶん何年もかけて少しずつ咀嚼していくことで、存在が小さくも大きくも変化していったと思うんですが、リャンハ少年はそうはいきませんでしたからね。
あとは、リャンハよりもドニーのほうが存在として大きかったというのもあると思う。ドニーに助けてもらった自分がいて、そういうドニーへの憧れがあるから、リャンハにもシャトーにも手を差し伸べてしまった。
はっきりと描かれているわけではありませんが、その描き方から推測するにドニーに対しては崇拝に近い感情があるので、リャンハとシャトーに手を差し伸べたのも、ドニーの影響は少なからずあると思います。
――第10話でリャンハを助けるときも、「ドニー先生なら助けるはず」と言っていました。
自分の中で考えをまとめた上で行動しているのではなく、追われたままに行動せざるを得ない状況だったので、経験則というより感じるままに行動しているんです。リャンハを助けるときも、ドニーという存在のイメージに突き動かされたんじゃないかなと思います。
――さて、いよいよ次回は最終話。ぜひ見どころを教えてください。
やはり、なぜリャンハが「ソン・リャンハ」という名を騙るようになったのかというところですね。現代に生きる僕らとしては、人の名前を騙るなんて想像できませんから。それが、リャンハの感情の動きでしっかりと表現されていると思うので、楽しみにしていただけたら嬉しいです。それを踏まえた上で、じゃあリャンハはシャトーと、シャトーはリャンハと今後どういうふうに付き合っていくのか。現在の時間軸のほうも楽しみにしていてください。
アニメ化したことで、リャンハのリャンハ少年への気持ち、「ソン・リャンハ」という名前へのこだわりが、よりクリアに、感情的に見えるようになった気がしました。最終話でも「ここはこういう関係性だったのか」と気づかされるところがたくさんあると思うので、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございます。さて、増田さんには『殺し愛』のタイトルにかけまして、「最近愛してやまないもの」を伺えたらと思います。
ハチミツです。何かにかけるというよりは、お湯で溶いたり、そのまま食べたりしています。
喉のために?
喉もそうですし、疲労回復もありますが、糖類として優れているので糖質を摂るために食べています。

――原作の第一印象はいかがでしたか?
最初はダークなお話……例えば、『ボーン・アイデンティティー』のようなサスペンス・アクション、「殺し合い」の作品かと思いました。ところが「殺し愛」。ラブなんだなと(笑)。リャンハとシャトーの関係性が人間らしくて、ただ殺伐とした暗殺者のお話ではないところが面白かったです。
――ニッカはどのような人物だと捉えましたか?
少しキレている人って重要な存在にはなってくるんですが、たいてい最初から死亡フラグが立っていますよね?
――ありますね(笑)。
それをニッカにも感じて、最初は「参ったなぁ」と(笑)。ただ、そういう役どころって物語の大筋とは違ったサイドストーリーで必ず物語を膨らませる役割を果たすので、ニッカの立ち位置はすごく気に入っています。しかも、見た目と内面に大きなギャップがあるところが面白いんです。
――というと?
ピアスをたくさん開けてどこかヘラヘラしているという、捉えどころがない見た目をしているんですが、モノローグに注目すると物事を冷静に分析しているんです。普通は逆ですよね? 冷静な部分を表に出して、内なる狂気はなるべく隠すのが人間だと思います。ところが、ニッカという人間はこれを逆転させているんです。この不気味さこそがニッカの魅力だと思うので、表立った狂気と内なる冷静さの度合いに気をつけながら演じるようにしています。
――確かに、他のキャラクターたちとは逆ですよね。
そうなんです。みんな平静を装いながら殺し合いをするという狂気じみたことをしている。それを逆転させたニッカは、作中で描かれる狂気というものをあぶり出す役割を担っているんじゃないかなと思いました。
――ニッカの役作りで他に何か意識されていることはありますか?
『殺し愛』はオフゼリフが多いんです。キャラクターが画面に映っていないところで喋るセリフのことですね。それが声の演技としては遊べる部分なので、そこでセリフを踊らせてみたり、息を入れてみたりしてニッカらしさを盛り込むようにしています。
――アドリブということですか?
目立つようなアドリブではなく、例えばセリフの前で「ふっ」と息を吸ってみたり、笑っているニュアンスを込めたりするイメージです。アニメのセリフ回しではないセリフ回しを少し入れてみたかったんです。どこか外画っぽさがある作品なので、そういうニュアンスを少しだけ入れるようにしています。
――また、第8話では車中でリャンハとやりとりをする場面がありました。あちらを演じられての感想はいかがでしたか?
密室劇ってすごく好きなんですよ。昔の映画だと『十二人の怒れる男』(法廷を舞台にしたアメリカ映画)なんかも大好きですし。第8話は車というさらに狭く、移動して逃げられない空間で心理的な駆け引きが行われる。一番面白いシーンでした。ニッカの性格がはっきりとわかる場面でもあるので、ジェットコースターのような演じ方をしています。
――確かに、テンションの落差が激しかったです。
陽の部分と陰の部分をジェットコースターのように分けつつ、波の大きさが小幅になっていって、最後に重なっていくようなイメージですね。そういう設計で演じたいなと考えていました。
――ニッカの観察眼もいかんなく発揮されていました。
分析のために、リャンハをけしかけるのが面白かったです。本当に冷静に分析しているんだなと。一番面白かったのは、怪我をしたリャンハにハンドタオルを渡すところですけどね。
――急に差し出していましたよね(笑)。
ハンドタオル、持ってるんだって驚きましたよ(笑)。ちゃんとしてるなって。自分の車を汚されたくないと言っていたので、かなりの潔癖症なのかも。きっと車の中に常備していて、自分のポケットにはアイロンをかけたハンカチを入れているんだろうな……なんて想像してしまいました。
――第9話もまた、リャンハと対峙する場面がありましたね。
第9話だけを見るとニッカが単純にリャンハとバトルをしたがっているように見えますよね。ただ、それだけだとニッカがただ暴力行為、人殺しが好きな人間になってしまいますし、ニッカのモノローグを聞く限り、そういうタイプではない気がしたんです。 もちろん、自分がどれだけ強いかは気にしていると思います。リャンハという人間が現れて、やっと腕試しができる。そういう感覚がないわけではないんです。リャンハに攻撃をされるときに、「獲物がかかった」とばかりにニヤッと笑う瞬間がありましたし、ニッカが殴るときのアクションにしても、バトルを楽しんでいるような余裕を感じさせられましたから。
――でも、それだけではないと。
そうです。リャンハを見逃すというところにすごく引っかかったんです。当然、そんなことをすればドニーや他の組織の人間から爪弾きにあうのは明白ですし、クレバーなニッカなので、それでもやるということは何かしらの理由があるんだろうなと。
――第10話では、自ら逃しながら飄々と「ソン・リャンハは俺が仕留める」と言っていましたね。
まさにそこですね。なぜ、その時間を作ったのか。そこがニッカをより深く理解するためのカギになるんだと思います。
――ドニー一家についてはどんな印象をお持ちになりましたか?
綺麗なお家で屋敷の中も整っていて、ドニー自身も理路整然としているのに、やっていることはめちゃくちゃ。ここがニッカと対比構造になっているのも面白いところだなと思います。ドニー一家だけでひとつ作品が作れそうです。
――残すところあと数話ですが、今後の注目ポイントを教えてください。
この作品には、リャンハ、シャトーのメロディー、リズムがあれば、ドニー一家のメロディー、リズムがあり、その流れが噛み合って大きなうねりとなっているので、ぜひその流れに身を任せていただけたらなと思います。流れとしてはシンプルなんです。余計なところを描かずに、大事なところをじっくり描いてくださっているので、そこを楽しんでいただけたら嬉しいです。
――ありがとうございます。毎回恒例なのですが、タイトルの『殺し愛』にかけて、皆さんに「最近、愛してやまないもの」を伺っています。森田さんはいかがですか?
バイクとカメラです。今日はスタジオまでスーパーカブで来ました。もう1台、23年乗っている1600ccのバイクがあります。カメラはフィルムカメラが200台以上、レンズはそれ以上ありますね。
――200台以上ですか!
はい、ヴィンテージものでだいたい60年前、70年前のものから、一番古いものは88年前のものまであります。
――実は、リレーQ&Aでも前回ゲストの日笠陽子さんからカメラに関する質問が届いておりました。「写真がお好きだそうですが、写真のどんなところが好きですか?」とのことです。
クラシックカメラの話になりますが、まず機械の精密さがすごいですよね。電池を使わずにバネと歯車で1000分の1秒だって正確にたたき出せる、その技術のすごさ。昔の人の知恵と技術力が感じられます。しかもそれが88年経っても新品のように使える。これはもうロマンとしか言いようがないです。 もう一つは物語があるところ。何十年前に作られたこのカメラ達は、一人の方が使い続けてきたのか、あるいは何人かの手に渡ってきたのかはわかりませんが、僕が生まれるずっと前に作られ、誰かが手にして、その時代、その場所の光、空気を撮ってきたわけです。それが僕のもとへやってきて、令和の時代の光や空気を撮っている。まるでタイムマシンみたいだと思いません? 一台一台のカメラに物語があるところが一番好きなところです。
――一台一台に刻まれた歴史があるわけですね。
実際、何千台と見てきているので、傷一つでどういう風に使われてきたのかがわかるんです。ここに傷がついているから報道の人だなとか、これは天体を撮っている人だなとか。使い方によって独特の傷がつくので、そういうのを見るのも楽しいですね。

――『殺し愛』の第一印象はいかがでしたか?
海外のサスペンス映画やミステリー作品のような雰囲気を漂わせていて、とにかく油断できない作品だと感じました。次の話数ではいきなりお話がひっくり返るようなこともあって、気が気じゃないんです。気づけば、目が離せなくなっていました。
――ミファについてはどのような人物だと思いましたか?
私にとって珍しい役どころで、新たな扉が開けそうだなとワクワクしました。最初に見たときは、一人称が「おれ」の小さい子だったので、男の子なのか女の子なのか見分けがつかなかったんです。見た目の雰囲気からどこか闇を抱えているようにも見えますし、ドニーの配下ということで危険人物的なところもあるのかなと思いながら、探り探り演じていきました。
――実際に演じた感触はいかがでしたか?
音響監督さんからは「ミファは女の子」だと伺ったので、女の子であることを意識しながらも、低音でぼそぼそと喋るようなイメージで演じました。
――最初のアフレコはスムーズにいきましたか?
はい、自分が考えてきたものをまずはぶつけてみて、そこから音響監督さんと相談しながら調整していこうと思っていたのですが、最初からOKをいただけたので、そのままやり切りました。
――ミファは言葉数がとても少ないキャラクターです。その辺での苦労はありませんでしたか?
なかなか掴みどころのないキャラクターですが、それでも第9話でミファの抱えるより深い闇のようなものが見えてきた感覚はありました。セリフとして描かれるわけではないのですが、ドニーに膝枕をされながら何かに怯えるような表情を見せるという印象的なシーンがあって、セリフがないからこそミファの持つ謎めいた部分が際立って見えました。一体、この子の過去には何があったのか、私も気になっています。
――ジノンに対して、「ばか、あほ、まぬけ」と容赦のない文句を言っている姿も印象的でした。
ミファのような子が「ばか、あほ、まぬけ」と、直接言える相手ということは、ある意味で心を許しているのかなと感じました。本当に赤の他人だったらそんなことを言わないし、言えないと思うので、ジノンにだけなのか他のキャラクターたちにもそうなのか。今のところわかりませんが、もしかしたらドニー一家なりの信頼関係みたいなものはちゃんとあるのかなと思います。
――そんなミファが非常に懐いているドニーについてはどのような印象をお持ちになりましたか?
孤児を集めて暗殺者に仕立てているという、まさに闇の世界の住人ですし、あの落ち着きようを見ていると、みんなドニーの手のひらの上で踊らされているようにも見えました。ただ、ミファをはじめとする子どもたちはやはりドニーを親のように慕っていますし、信頼も厚いんだと思います。 もちろん、彼に逆らえばもしかすると行く場所がなくなってしまうかもしれない……そういった恐怖によって縛られている可能性もあるので、複雑な事情で繋がった家族なのかなととらえています。まぁ、ニッカさんだけはだいぶ自由ですが(笑)。
――子ども同士でも、気を抜くと命の取り合いをしかねないハラハラ感があります。
そうですね。それぞれ自分が一番頭が良くて、自分が一番ドニーのために動ける人間なんだという自負みたいなものを感じます。
――ドニー役の大塚芳忠さんとは一緒にアフレコできているんですか?
芳忠さんとはご一緒できています。本当にありがたいですし、お芝居を聞いてさすが芳忠さんだと思わされました。淡々としている中にも恐ろしさや底知れなさがあり、それは芳忠さんご自身も持っていらっしゃる部分だと思うんです。優しい方だけど、淡々としていてどこかミステリアス……。そんな雰囲気がドニーにぴったりだと感じました。 最近、私が芳忠さんとご一緒すると芳忠さんが何かの黒幕を演じられていることが結構あって、私もその仲間というパターンがあるので、毎回面白いご縁だなと感じていて(笑)。実際、現場でも「お互い、悪役ですね」という話をよくするので、勝手に親近感をもっています。
――ドニー一家以外で、気になるキャラクターはいますか?
リャンハの過去ですね。リャンハといっても、増田(俊樹)君が演じている「リャンハ少年」です。「一体誰!?」と思ってしまって。役名も不思議で、登場シーンも謎だらけ。ずっとリャンハ少年が気になっています。増田君とは第7話で一緒にアフレコする機会がありました。リャンハ少年に対してのディレクションはかなり熱いものがありましたし、増田君も熱が入っていたので、彼がどんなカギを握っているのか今から楽しみにしています。
――さて、皆さんには『殺し愛』の「愛」にかけて、「最近、愛してやまないもの」を伺っています。日笠さんが最近愛しているものを教えていただけますか?
少し前にちょっと高級な炊飯器を買いまして、今はそれで玄米を炊くのが楽しいです。玄米を食べたいと思っても今までの炊飯器だと上手に炊けなくて、「もうやーめた!」となっていたのですが、本当においしく炊けるので、今は全部玄米に変えました。
――そんなに違うものなんですか?
玄米は長時間、水につけ置かないといけないんです。でも、つけ置きしなくてもふっくら炊き上がって、「ついに理想の炊飯器に出会えた!」と思いました(笑)。

――原作や作品資料を最初にご覧になったときの感想はいかがでしたか?
原作を読まず、簡単な資料だけ目を通して収録に臨みましたが、まず『殺し愛』というタイトルが斬新で魅力的だなと感じたのが最初ですね。
――ドニーの印象や魅力を感じる部分を聞かせてください。
暗黒に生まれ、暗黒に生きる男という印象。ひりひりとするような冷たさと哀愁。傍に近寄ると必ず大けがするような感じ……でしょうか。
――どのような役作りでアフレコに臨まれているのでしょうか。
とにかく冷たく、静かに。感情を表に出さない。「ゆらぎのない無機質の金属のような物体」をイメージして臨みました。
――主人公とヒロインであるシャトーとリャンハについては、どんな印象をお持ちですか。
謎のヒロインと謎の男、という印象です。謎の中で生きなければならない人。だからこそ感じ合うこと、引き合うこと、このさまざまなせめぎ合いが悲しく、美しいなと感じます。
――『殺し愛』のタイトルにかけまして、最近、「愛してやまないもの」を教えてください。
車ですね。仕事の行き帰りにいろいろ考えたり、考えなかったり。気持ちをフラットに戻す最高の個室だと思っています。
――今後の見どころや楽しみにしてほしいことを教えてください。
5、60年前の「フィルム・ノワール」と呼ばれた映画作品のように、アニメ界の「フィルム・ノワール」と呼ばれるような作品だと個人的に思います。そうなる要素に溢れた作品ですし、そのムードはたっぷりと感じられると思いますよ。

――作品の第一印象はいかがでしたか?
オファーをいただいたときに、一番驚いたのが『殺し愛』というタイトルです。とてもキャッチーな言葉なのに、今まで作品タイトルで聞いたことがありませんでしたし、「どんな内容なんだろう?」とタイトルを伺っただけで内容が気になってしまって、原作を読ませていただくのが楽しみでした。
内容はまさに「殺し」が当たり前のダークな世界観。でも、なかなか核心が見えないところが面白くて。なぜリャンハがシャトーさんに執着しているのか、シャトーさんの過去に何があったのか。それを知りたくてハラハラしながら読み進めました。どこへ辿り着くのかまったく予想できないところが魅力だなと感じます。
――村瀬さん演じるジノンの第一印象はいかがでしたか?
最初は明るい印象を受けたんですが、原作を読ませていただくと、どこか冷酷な部分があったり、言葉の真意が見えなかったりと、底知れない怖さを感じました。
――いったい何者なんだろうという疑問がわきますよね。
そうなんです。ぱっと見て年齢がわからないのも含めて(笑)、なかなか尻尾を掴ませないところが魅力だと思います。
――大庭秀昭監督や音響監督の髙桑一さんから、何かディレクションはありましたか?
最初にだいたいの年齢感を伺ったくらいでした。お二人とも前にお仕事をさせていただいたことがあって、特に髙桑さんはミステリアスで底が見えない雰囲気の役でご一緒することが多いので、特に「こういうふうに変えてください」というディレクションはなかったです。こちらがお持ちしたものをそのまま受け入れていただきました。
――どういった役作りでアフレコに臨んだのでしょうか?
屈託のない表情を見せながらも、そこに彼の心は本当にあるのかという空虚さを感じたので、その不気味さや怖さを大事にしました。もう一つは、楽しく仕事をしている様子です。ジノンは、ドニー一家ではそこまでイニシアチブを握れていないと思うんです。皆さん、個性派揃いなので(笑)。その立ち位置で、ドニーさんから花形とも言える仕事を任されたというのは、ジノンにとってきっと嬉しいはずでしょうし、その喜びとシャトーさんを追い詰めていくサディスティックな喜びは大事にしたいと思いました。
――シャトーとの会話では完全に彼女を翻弄していましたね。
ジノンは人の道から外れた人間ではあるんですが、ちゃんと喜びや嬉しさという感情は持っているんです。シャトーさんとの会話の中でも相手をコントロールする気持ちよさを感じるだろうと思ったので、シャトーさんのお芝居や画から伝わってくる動揺に合わせて、僕も感情を強めに出したり、引っ込めたりという駆け引きをするようにしました。その意味では、シャトーさんから大きな刺激を受けました。
――アフレコの時点で画がほぼ完成していたと伺いました。完成した映像から伝わる情報も大きいのでしょうか?
V(映像)チェックの段階で監督の作りたいもののイメージがしっかり伝わってきますし、ヒントがたくさん見えるので、とてもありがたいです。情報がしっかり提示されているという意味では、外画に近いかもしれないですね。外画はさらに音楽や音が乗っていますが、それと変わらないくらいの情報量でした。ただ、ボールド(セリフの尺を示すガイド)がないぶん、(口)パクがうまく合わないこともあって。そういうときはちょっと申し訳ない気持ちになります(笑)。
――アフレコで何か思い出に残っていることはありますか?
アフレコブースに入れるのが三人までに限定されているんですが、ブースが二つあり音声と映像が同期されているので、最大六人でアフレコできるんです。他のキャストの方のお芝居を聞いて、それに反応してお芝居ができるという環境を作ってくださって、本当に頭が下がる思いです。
――今後のドニー一家の見どころについても聞かせていただけますか?
YouTubeで公開されている『殺し愛』のアフタードラマにドニー一家も登場することになり、先日、皆さんと録らせていただきました。シリアスが続いていく本編も楽しみにしていただきたいんですが、アフタードラマはただただ楽しい内容になっているので、こちらも楽しみにしていただけたら嬉しいです。 ドニー一家にもこんな日常があったのかも……と思える、柔らかい雰囲気のドラマです。ドニーがお父さんのようなおじいちゃんのような雰囲気で、ジノン、ニッカ、ミファがある意味、仲睦まじい姿を見せてくれます。
――少し聴かせていただきましたが、まさかの展開に驚きました(笑)。
本編の流れと全然違いますよね(笑)。これはこれで楽しいなと思いました。
――作品全体として、第8話以降の展開で注目してほしいポイントを教えていただけますか?
繰り返しになりますが、アフレコのときに映像がほぼ完成しているんです。このご時世ではなかなか考えられないくらいとても丁寧に作られ、画面から数多くのスタッフさんの愛情が感じられます。いただいた映像には修正の指示なども書かれていて、アフレコのあと、きっと皆さんがご覧になるときにはさらにパワーアップした映像が楽しめると思います。どんな映像になるのか、僕自身も楽しみにしています。 そして、これからジノンをはじめドニー一家がシャトーさんやリャンハにどんどん近づいていくことになります。まだまだ謎めいたキャラクターたちばかりですが、個人的にはドニー一家のことも応援していただけると嬉しいです。
――ありがとうございます。そして、皆さんへの共通質問があります。『殺し愛』の「愛」にかけまして、村瀬さんの「最近、愛してやまないもの」を聞かせていただけますか?
最近というわけではないんですが、定期的に物件のサイトを見ています。賃貸、購入にかかわらず、いろいろな物件を見るのが好きで(笑)。仕事が終わって自宅へ帰ると、新しい物件が更新されていないかよく調べています。
――すごい趣味ですね!
価格帯を見てこの辺が高いんだとか、こんなに高いけど何があるんだろうとか調べるのが好きなのかもしれません。
――引っ越したいというわけではなく?
引っ越しをよくするので、それもあると思います。今の家も住み始めてから4年ぐらい経っていますし、そろそろ引っ越ししたい時期です。

――第6話が放送されました。前半は社長とジムにとっても明るいお話でしたね。
前半は……ですけどね(笑)。社長の奥さんが出てきたのはびっくりしました。
ホークさんには頭が上がらなかったね。
(笑)。
ホークさんが登場したことで社長がどういう人物かが改めてわかりましたし、アフタードラマ(#5.5)でも馴れ初めが描かれて、よりキャラクターとしての個性が出たなと感じました。社長に限らずですが、(原作者のFe)先生のキャラクターはみんな個性的で、誰一人として普通の人がいないのが面白いですね。
個性の強さも感じますし、どのキャラクターもちゃんと人間として生きている感じがします。社長の奥さんが出てきたときに、社長が「ホークさん」と呼んでいて、その一言に社長の人となりが表れているように感じたんです。二人の関係値、社長の優しさ、どんな会話をしているのか。それが一瞬で伝わってきました。
――ホークさんは社長のどんなところが好きになったんでしょうね。
社長を好きになるのはわからなくないですね。ホークさんはお金もあるし、きっと欲しいものは自分で掴み取るような人。だからこそ、かえって社長のような一緒にいて疲れないタイプが好きになったのではないかなと思います。
自分らしく自然体でいられるのかもしれないですね。
――監視カメラとにらめっこしていたジムが、寄り添って寝ている社長とホークさんを見てキレるシーンも面白かったです。
そうなんですよ! ジムは第5話の最後で豪華客船に乗れることをすごく喜んでいたのに、結局、大変な仕事を任されて。夜通し頑張ったらシャトーはリャンハとイチャイチャしているだけだし、社長は社長でホークさんと仲良く寝ているし……。恋愛をしている人への怒りのようなものが感じられました(笑)。
――ははは(笑)。
その嫉妬のようなものが1話を通して出てきたので、「そっか、ジムは今いい人がいないのかな……」といったことを想像してしまって。さらにジムのことが好きになりました。
社長にスリッパを投げたのが面白かったですね。
ジムのイライラが伝わってきますよね。
前回の繰り返しになりますが、この会社(リッツランサポート商会)は社長だからどうこうみたいなお堅い上下関係がなくて、みんな仲間という意識で仕事しているように感じられるのが素敵です。
それも社長の優しさなのかなと。部下にスリッパを投げられて怒らない上司もなかなかいないと思います(笑)。
――そして、ついに社長がリャンハと直接のコンタクトを取り、最後は何者かに首を刺されるというとんでもないことになってしまいました。
こういってはあれですが、面白いですよね。逃げ場のない空間の中で命を狙ったり狙われたりが繰り広げられていくのは。一体、社長を刺したのは誰なんだと。リャンハのように見えますが……本当にお話の引っ張り方がうまいなと感服しました。普通、社長は刺されるようなキャラじゃないですよ(笑)。だから、ジムにもそういう番が回ってくるかもしれない。
誰がどうなってもおかしくないような状況ですし、主要キャストだからといって安心できないドキドキ感があります。
だから、原作をどこまで読むかすごく悩んでしまうんです。役者も最後まで読んで知っておきたい派と、読まずにキャラクターと同じくらいの情報量で演じたい派がいて、監督さんによっては「答えがわかっているようなお芝居はしないでください」という方もいます。
どちらも正しいんですよね。
そうなんです。僕なんかは、原作があればどんどん読みたいと思うタイプですね。
僕は社長が刺された時点で、ここで止めておこうかなと思いました。結局、その先まで読んでしまいましたが……。その先の展開を知って、そこで本を閉じました(笑)。
――お二人はシャトーとリャンハの関係をどうご覧になっていますか?
リャンハからの好意は強く感じられますが、シャトーからの好意はまだ感じられないので、ここから二人の距離がどう近づいていくのかが楽しみです。今後もいろいろな事件が起こるでしょうし、そこで絡み合えば絡み合うほど関係性は深まっていくと思います。
好意はまだなさそうですが、第1話で本当に殺し合っていた頃に比べると、シャトーはだいぶリャンハに慣れてきましたよね。リャンハが積極的に近づいてくることによってシャトーも関わらざるを得なくなり、多少の人となりがわかったのか、最初の頃のような警戒心は薄れたように感じたんです。それこそ本気で警戒している相手だったら、目の前でぐっすり寝るなんてできませんよね?
――そうですね。気づけば寝てしまいましたからね。
リャンハ自身も「ずいぶん信用されたもんだ」と言っていて。シャトーの深層心理の中では「私のことを殺しはしないだろう」という感覚もあるような気がしました。
――信頼とは言えないまでも、最初の頃の敵意は薄れているかもしれない、と。
そうですね。お互い合理的な考えも持っているので、この状況で危害を加えることはないだろうとやや好意的に判断しているのかもしれません。シャトー自身も、ただいらないものを排除するような性格ではないですし、ほんの少し心を許し始めているというか、ちゃんと人として接してはいるのかなと思います。
――ただ、社長からすると二人の距離が近づいていくのは気が気じゃないですよね。
最初の頃は「シャトーちゃん!」と言って、焦ってばかりでした。少し心配性なところはありますが、何よりシャトーの身に何かがあってはいけないという気遣いが一番大きいんだと思います。第4話でアンナさん(シャトーの母親)のところへ行ったのも、きっとシャトーの出自に思うところがあり、力になれるところは力になりたいという思いがあったからなんでしょうね。
何かがないと、そこまで心配しませんよね。だからこそ、リャンハの真意を知らなければいけないと思って、リャンハに接触したのかなと思います。
でも、近づいてはいけないと思えば思うほど、盛り上がるものってありますから。しかも、死と隣り合わせ。これを乗り越えたときに、もしかしたらシャトーとリャンハの間に深い愛が生まれるのかもしれない。
恐ろしくもあり、楽しみでもありですね。二人の距離が縮まるのも見たいですし、でも一方でヒリヒリするような怖さもあって。社長が心配する気持ちもわかります。
――お二人は第7話以降、どんなことを期待していますか?
シャトーとリャンハの関係性がどんなふうに深まっていくかも楽しみですが、(大塚)芳忠さん演じる超魅力的なドニーがどう動いてくるのかも楽しみにしています。この作品は恋愛が面白いだけじゃなくて、“ワル”たちも本当に魅力的なんです。今後も個性豊かな悪人が登場するので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
賢雄さんがおっしゃったように登場人物がどんどん増えていきます。演じる声優さんも本当に豪華なので、どんな掛け合いができるのかが楽しみです。ドニー率いる組織のキャラクターも登場していきますので、毎週の放送を楽しみにしていただけたら嬉しいです。
あとは、魅力的なキャラクターが多いからといって社長とジムの話が減らないと嬉しいですね!
ぜひ、よろしくお願いします!
――さて、皆さんへの共通質問なのですが、『殺し愛』の「愛」にかけまして、「最近、愛してやまないもの」を教えていただけますか?
ゴルフですね。去年は、芳忠さんとも一緒に行きました。そうしたら、芳忠さんが間違って僕のゴルフバッグにドライバーを入れて帰ってしまったんです。数ヶ月後に気づいたんですが、電話をしたら、「やっと気づいたか」と言われて。気づいていたなら電話くださいよと思いました(笑)。最近はなかなか時間がないんですが、スタジオで練習しています。
休憩時間にされていますよね。
今回のアフレコでも音響監督から「カメラがあるんだから、スイングばかりしないでくださいよ(笑)」と言われました。バレていましたね。
――天﨑さんはいかがですか?
ソロキャン(ソロキャンプ)です。コロナ禍でおうち時間を過ごす中、一人でグランピング(魅力的なキャンプ)するのが話題になっていて、僕も男心をくすぐられてしまいました。(この取材時点で)まだ一度もやったことがないので、ぜひやってみたいなと思っています。

――最初に作品に触れたときの感触はいかがでしたか?
タイトルと設定を聞いて、殺し屋同士の恋愛模様を描く作品なのかなと思ったんです。実際はリャンハの一方的な愛でしたが(笑)、二人の恋愛がどういう形で成就していくのかがとても楽しみでした。殺し屋同士というミステリアスな設定から、二人の間にはいろいろな障壁があるだろうと想定できますからね。自分が出演する作品でありながら、ずっとワクワクしていました。
僕もまず『殺し愛』というタイトルを聞いて「お、なんだろう?」と不思議な感じがしたんです。最初は口頭で聞いたので、殺し合うほうなのかなと思ってしまって。
――「殺し合い」だと。
そうです。でも、「殺し」と「愛」という対極にありそうなものがタイトルになっていて。一体、それがどう交わっていくのかが楽しみになりました。実際に原作を読ませていただくと、二人の想いが愛なのか愛ではないのかというミステリアスな部分も楽しむことができて、アフレコが待ち遠しかったです。
――お二人から見た社長の第一印象についても聞かせてください。
僕はもうちょっとコミカルなタイプの役だと思ったんですよ。
わかります!
彼は組織の中で社長という立ち位置にあり、仕事にも忠実。それにくわえて、シャトーの過去を知っているキーパーソンで、いろいろなことに気を遣いながら生きている。つまり、かなり真面目な人なんです。先のことを考えながら物事を進められる几帳面さがあるし、正義感にも溢れていますから。描かれ方はとてもナイーブですが、芯をしっかり持っている人だなと感じました。
社長はシリアスとコミカルのバランスが絶妙ですよね。見ていてとても楽しいです。
そうそう、一見するとコミカルで、軽くて、ちょっとダメなところがある(笑)。でも、心の奥底に人としての強さがちゃんとある人なんです。
しかも、すごく優しいんですよ。シャトーさんとの会話を聞いていると、言葉から優しさを感じるというか。賞金首を狙う組織のボスというと怖いものだと思ってしまいますが、社長からは人情が感じられて、この人は根っからのいい人なんだなと伝わってきます。
先生(原作者:Fe)のすごさを感じますね。いわゆる殺し屋と聞くとコワモテで、尊大で……といった常識をことごとく打ち破っている。この作品には、隙だらけに見えるのに実は強さを隠し持っているみたいなキャラクターがたくさんいますよね。それが『殺し愛』の魅力だと思います。
――そして、社長は25歳という設定です。
第1話のアフレコで先生から教えていただきました。「それじゃ僕、無理かもしれない」と言ったんですよ。そしたらね、「社長は人生経験もあるし、老けて見られるし、声も見た目通りだから大丈夫です」って。何が大丈夫なんだと(笑)。
(笑)
経験というところが大きいんだと思います!
でもね、それほど役を作るわけでもなく、意外と意識せずできるんです。確かにこういう組織の社長であれば人生経験もあるし、その意味では25歳でこの声もありなのかなと思いました。
――では、天﨑さん演じるジムについてはいかがでしょうか?
オーディションのときから思っていたのですが、とにかくいい子。社長にツッコミを入れたり、定時にそそくさと帰ったりと、意外とドライな子かなと思いきや、シャトーさんが困っていれば助けますし、なんだかんだ言いつつも社長のことをちゃんと信頼しているんです。きっと優しい子なんだろうな、と。 この先お酒を飲む描写も出てくるので、「いいお兄さん」な感じもありますが、、かわいらしいので、つい幼く見てしまいます。
ハッキリとモノを言えるところが素敵ですね。それでも、しっかり仕事をこなしているから組織の一員としてちゃんと認められている。すごくいい立ち位置だなと思います。ただ、とにかく謎だらけ。原作でもこれまでの人生とか出自とか全然語られてないんでしょ?
そうですね。
謎だらけジム君ですが、この先もリッツランサポート商会の一員としてきっと活躍してくれるんだろうなと期待しています。
――役作りではどんなことを意識されていますか?
最初、コミカルに作ってしまったというズレがあったので、台本以上のことはしないようにしています。台本にそう書かれていれば自然とコミカルになりますし、こちらからあえてあざとくコミカルにする必要はないんです。台本に合わせてリアルに喋っていけば、僕の人生経験とうまくマッチしてくれるだろうという感覚でやっています。
ジムはやはりアクセントですね。お芝居というものに答えはありませんが、ジムのアクセントはそれ以上に答えがないんです。第1話もかなり悩みながら臨みました。「もう少しカタコトでいいですか」とディレクションをいただいたので、最初の想定よりはかなり濃いカタコトになったと思います。
――ジムのアクセントは本当に独特ですよね。何かコツのようなものはあるんですか?
台本のセリフは漢字とカタカナで表現されているので、漢字の部分は他の言葉に聞こえないようわかりやすく喋るようにしています。それから、海外から来た方はいろいろな方言を聞かれていて、どれが正解かわからないまま話されていることがありますよね? たまに関西弁が混じってしまう、みたいなことが。僕も関西出身なので、たまに関西弁を入れて意識的にアクセントをごちゃ混ぜにしています。
――ジムは放送されたばかりの第5話で、負傷したシャトーとリャンハを闇医者のところへ運ぶという役割がありました。
シャトーを助けるという行為も素敵ですが、何より偉いと思ったのがちゃんと社長に報告しているところですね。シャトーとしては絶対に隠したい、でもジムは心配だからこそ連絡するんです。自分に迷惑がかからなければ勝手にやってくれというスタンスではなく、本当にシャトーを心配しているんだろうなと感じました。
――一方、社長はシャトーに謝罪されて、逆に困惑していましたよね。
向こうが頭を下げると、「いやいやそこまでしなくても」と困惑してしまう人なんでしょうね。ちょっと反省してくれればいいから、と。そういうところからも人のよさが伝わってきます。
社長が言いすぎちゃったような雰囲気になっていました。
俺にそっくりだな。
(笑)
――第5話以外で印象に残っているシーンはありますか?
第1話のクリスマスが楽しかったです。
楽しかったね。
シリアスなシーンが続いていたので、二人の掛け合いがちょっとしたリラックスタイムになっていて、ホッとできました。今後、さらにシリアスになっていくと思うので、なかなか難しいとは思いますが、ジムと社長の掛け合いが少しでもあると嬉しいです。
社長とジムが二人でいるシーンは、なんだか楽しくなりますね。「この会社、上下関係あるの?」って、ツッコミを入れたくなります。
ジムが辛辣ですよね。
だからこそ、この会社はうまくいってるのかもしれない。
社長の懐の深さのおかげですね。

――第4話では、ついにリャンハとホーが相対することとなりました。
ホーがリャンハを煽って心を乱そうとしても、全然挑発に乗ってくれなかったのが印象的でした。
動じてなかったよね。
ホーに達成感や高揚感があったぶん、リャンハを前にしてちょっと空回りしている感じもありました。前半、リャンハからの電話を受けたときに、タバコを吸ってむせるシーンがあるんです。やっとリャンハの居所を掴んで、スンウさんの仇を取れるという喜びに溢れたシーンなんですが、リャンハがまったく取り合ってくれない。その温度差が面白かったです。
――逆にリャンハは常に冷静でしたよね。
シャトーを人質に取られて内心キレていたのかもしれませんが、なかなかそれを表面に出さないんです。唯一、爆発があった直後にシャトーを心配したような表情を見せたくらいですよね?
そうですね。あとは、演出でリャンハの表情がうまく隠されていたのもいいなと思いました。たとえば、前野君が言ったホーと電話をするシーン。怒っているのかなと思わせつつも、その表情を見せず、心情が汲み取れないような演出になっているんです。
底知れないキャラクターなのがよくわかりました。ホーのような直情型の人間は、きっとイライラさせられると思います(笑)。
演者としては表情が見えなくて大変なんですけどね。少ない情報から感情を汲み取って、さらにその感情を抑えていかないといけないので……。
テクニカルな話になってしまいますが、この作品はアフレコの段階で画ができているのがとてもありがたい一方で、オフゼリフ(画面外の声や話者の口もとが見えないシーンのセリフ)のタイミングがすごく難しいんです。
映像ができているということはカット番号やボールド(セリフのタイミングと尺を示すガイド)がないということなので、完成しているからこその難しさはあります。ただ、画ができているほうが圧倒的にやりやすいよね?
そうですね。キャラクター同士の距離感やアクションが非常にわかりやすいです。
リャンハは表情が見えないときもありますが、見えるときは細かい表情のニュアンスがわかるので、本当に助かっています。
――そのリャンハが「しまった」と声を出すシーンもありました。
シャトーが単独で襲撃犯を追っていったところですね。ここも案配を探るのが難しいポイントでした。最初はもう少し感情を込めたのですが、「そこまで出さなくて大丈夫です」とディレクションをいただいて、軌道修正したんです。 最後の爆発の直後も同じでした。台本には「――!!」と書かれていたんですが、シャトーの危機に動揺を見せつつも、感情を出しすぎてしまうと余計な含みをもたせてしまうかなと思い、ほとんど息づかいを入れなかったんです。「アドリブ(の息づかい)を入れてください」と言われることもなかったので、台本に「……」や「――」と書かれていてもあまり息を入れないほうがいいというのが、ようやくわかってきました。
今回、リャンハが動揺する姿を見て思ったんですが、やっぱりシャトーは何か特別な存在なんでしょうね。
リャンハ自身のバックボーンはまだまだ謎だらけですが、シャトーが大切な存在であるというのは確実だと思います。どういう感情によって大切だと思っているのかはまだわからないですが……。少なくともリャンハにとって重要な存在だというのはよくわかりました。
好意を寄せつつも、距離感をはかりかねているところもありますよね。
確かに、つきまとってグイグイいくわりにどこか一線を引いたところがあります。手は出さないぞ、というような(笑)。それもまた彼女を大切にしているように見える部分です。
シャトーとしても、距離感を掴みづらいですよね。信用するには危険すぎるし、油断したら殺されてしまうかもしれない。
そういった意味では、シャトーの不安感、不信感はすごく共感できます。
――前回のインタビューでも下野さんがおっしゃっていましたが、単純なラブではなさそうですよね。
なぜシャトーに対して優しく接するのか、ここまで固執するのか。今後、明らかになっていくのかなと思います。
現段階ではまだ想像の域を出ませんけど、二人の過去が絡んでくるのは間違いなさそうですね。
――シャトーが関係していた17年前の事件で、ソン・リャンハという名前が出てきました。
でも、そのソン・リャンハという少年は亡くなっているんです。シャトーも本名は違っていましたし、気になるシーンばかりでした。
ソン・リャンハが亡くなっていたって、どういうことなんでしょうね。
結果、今のソン・リャンハも一体何者なのかますますわからなくなって。過去が明かされたと思ったら、さらに謎が深まりました。
――では、第5話以降に期待していることや楽しみにしていることを教えていただけますか?
ホーは「第2ラウンド」と言っていたので、二人のバトルに期待したいですね。ホーとしてはなんとしてもスンウさんの仇を取りたい一心だと思いますが……とはいえ、すでにリャンハに撃たれているので、そこから二重、三重の予防線を張っているであろうリャンハにどう立ち向かうのか、楽しみにしています。
ホーはよくも悪くもまっすぐだから、リャンハとは相性が悪そうだよね。
そうなんです。リャンハにとっても想定外のことが起こっているはずなんですが、彼は突発的な事態でも実力と経験値でリカバリーできるんですよね。その自信があるから、心を強く保てる。ホーとしてはとてつもなく厄介だと思います。
あとは、バトルも含めてリャンハとホーがやり合う姿をもっと見てみたいです。第4話は会話がホーから一方通行なところがあったので(笑)。掛け合いもたくさんあったら嬉しいです。
――さて、キャストの皆さんへの共通質問も伺えればと思います。『殺し愛』のタイトルにかけまして、「最近、愛してやまないもの」を教えていただけますか?
僕は「健康」。
確かに大事です! 僕は……やはりこういうご時世になって車移動が多くなったので、愛車ですね。崖から落ちないように気をつけながら運転したいです。
大型二輪に襲われないようにしてね。
はい。大型二輪に襲われても危険を避けられるようにしたいです。……いや、普通に事故に気をつけます(笑)。

――前野さんは、最初に本作に触れたとき、どんな印象をお持ちになりましたか?
メインキャラクターもそれ以外のキャラクターも、それぞれミステリアスな部分が多く、そのバックボーンを探るのが楽しい作品だなと感じました。ストーリーも先の展開が予想できなくて、今まで培ってきた知識で先読みしようとすると、いい意味で裏切られていく感じがとても斬新で面白かったです。
――ホーに関してはどんなキャラクターだと思いましたか?
リャンハとは過去に因縁があり、彼への復讐心で行動しています。見た感じは危険な香りを漂わせていますが、自分が信じる者への揺るぎない信頼があって、登場人物のなかでも特に強い信念に基づいて行動している、非常にまっすぐな性格のキャラクターです。言い換えると、目的のために手段を選ばない残酷な性格でもあるんですけどね。
すごく人間的だよね。
そうなんですよ。シャトーもリャンハも感情をあらわにするタイプじゃないので、ホーがすごく感情的に見えるという(笑)。序盤に登場するキャラクターのなかでは、社長と同じくらい人間らしいキャラクターだと思います。
どちらかというと、僕はホーみたいな役を演じることが多くて(笑)。以前に兄貴分を慕って復讐を遂げようとするキャラクターを演じたこともあったので、個人的にとても愛着を感じました。シャトーの命を奪おうとする過激で危険なヤツではありますが、どこか憎めないところがあります。
性格がまっすぐなので、行動にもそれなりに納得がいくんです。慕っていた人があんな殺され方をされたら、ホーのような行動を起こしても仕方ないなと思わせてくれる。
誰の指示でもなく、あくまでも自分の信念に基づいて行動するというところは、わからなくはないなと感じました。
――前野さんはホーを演じる際にどんなことを意識されていますか?
感情を前面に出すキャラクターなので、感情の出し方の強弱に気をつけています。あとは、現場で音響監督とディスカッションさせていただいたときに、少し人を小馬鹿にするような、イラッとさせるようなニュアンスがあるといいかもとアドバイスをいただいて、そのニュアンスをつけ足していくようにしました。
――第3話では5年前のホーも登場しました。
過去のホーに関しては、スンウさんも存命で今ほどやさぐれていないので、かわいらしい手下感を少し意識しました。ちょうど今日(取材日)、第4話のアフレコが終わったんですが、第4話に関しては打って変わってかなり鬼気迫るものがあると思います。
初登場の第2話もインパクトあったよ。あのバイクのシーンがすごかった。
シャトーを殺しにくるシーンですよね? 大型バイクに乗って、後ろを見ながら片手で運転して、銃を撃つ……すごいですよね。普通はできないと思います(笑)。
前野君、バイクは乗るの?
バイク、免許は持ってるんですよ。片手運転なんてしないですし、絶対にできないですけど。
ホーは毎日乗って練習したのかな。
想像すると面白いですね(笑)。
――そしてリャンハですが、第3話では過去にスンウを殺害していたことが明らかになりました。あのシーンは、リャンハの冷徹さを改めて突きつけられました。
いや、本当に何を考えているのかわからないですよね。
この人に背中を見せちゃいけないなって思いました。明日のメシの話をしていたら、いきなり後ろからズドン、ですからね。一瞬でも隙を見せたら命を奪われるかもしれない……そんな“信用ならなさ”があります。
――逆に何かリャンハに魅力を感じた部分はありますか?
視聴者目線で見ると、優しい顔をして感情を出さずに敵を倒していくというのは、圧倒的な強者感があって純粋にかっこいいなと思います。ただ、下野さんもおっしゃったように、真意をはかりかねる部分が非常に多いので、やっぱり怖いですよね。……まぁ友達になりたいかと言われたら、ちょっと困っちゃいます。
(笑)。
腕利きの殺し屋というのは間違いないんですが、すぐ裏切りそうな危うい一面もあるので、目を付けられないようにしたいです。
――(笑)。現段階では、リャンハがスンウを殺した理由も謎ですよね。
そうなんですよ。ただ、リャンハは衝動的な行動をするようなタイプではないので、何かしらの理由があるんだろうなとは思いました。それこそスンウさん以外にも幹部たちをことごとく殺してしまったわけですから、その意図がどこにあるのか、今後の展開を楽しみにしたいです。
スンウさんたちも裏で何かやっていたのかもしれないですが、ぱっと見たところ、スンウさんってすごくいい人のように見えるんですよね。だからこそ、ホーと同じように「なぜ……?」と思ってしまうし、そういうミステリ的なところも面白いなと思いました。
そうそう、スンウさんがすごく気にかけてくれて、悪い関係ではなさそうでしたし。ホーには嫌われていたけれど、リャンハは特別嫌っているようには見えなくて……。スンウさんとの掛け合いもすごく穏やかな感じでできたので、本当に「なぜ……?」と思うばかりです。
――モーテルでのシャトーとのやりとりは、どこかコミカルなとこもあって楽しかったです。
個人的には、さらに謎が深まりました。第1話からシャトーにつきまとい、そこには好意がありつつも、それだけではない別の目的が感じられたのですが、別の目的というのが一体なんなのか、シャトーに本当はどんな感情をいだいているのか。ますますわからなくなったというか……。シャトーの家で本人からもツッコミを入れられていましたが、リャンハの行動はリスクだけで本当に利点がないんですよ。“愛”だけでそこまでできるのか……謎だらけです。
――シャトーが怪訝そうにしているのもよくわかるというか……。
僕ら以上にわからないと思いますからね。
真意をはかりかねているところでしょうね。シャトー自身もその素性がいまひとつ見えないし……。
謎が深まって、この先がますます楽しみになりました。
――一方、ホーからすればシャトーはリャンハの弱点にもなりうる存在ですよね。
そうですね。リャンハをおびき寄せるための絶好の関係者なので、その意味ではシャトーに利用価値を見いだしていると思います。ただ、車のタイヤを撃ち抜いても見事なドライビングテクニックで攻撃してくるあたり、ホーもただ者ではないと認識しているはずなので、シャトーと相対するときは決して油断せず、最初から本気を出してきそうですね。
――シャトーというキャラクターそのものについてはいかがですか?
賞金稼ぎという仕事をしている以上、冷徹にならなければいけない場面もあるでしょうし、実際、非常にクールな女性だと思うんですが、その一方で思った以上に人間味のあるところを見せてくれて、それが面白かったです。たとえば、リャンハとのモーテルでのやりとりは、意外と感情的になるんだなと思って驚きました。
口数は少ないけれど、リャンハとのやりとりを見ているとイライラしているのがよく伝わってくるんです(笑)。リャンハに比べれば感情の揺らぎがはっきりわかりますし、本来はとても素直な子なんだろうなと思います。お母さんからの留守電を聞くだけでも、両親から大事に育てられて、まっすぐに育ってきたんだろうなというのが伝わってきました。
あと、いわゆる殺し屋をしながらも、自分が女性であることを忘れていないところがかわいいです。
わかる。あまり気にしないのかなと思っていたら、着ているものを全部洗濯に出されて怒っていましたし。
そういうところが“ギャップ萌え”なんでしょうね。
逆に、服を脱がしたことについて何も思ってなさそうなリャンハが不思議なんですよ。脱がせたシーンは描かれていないので実際はわかりませんが、おそらく、よくわからないから適当に洗濯してきましたという、あっさりした感じだったと思うんです。そう考えると、シャトーへの気持ちは本当にラブなのか、あるいは落ち着いているだけなのか……。繰り返しになりますが、本当に謎だらけです。

――第2話が放送されましたが、第1、2話と演じられての感触はいかがですか?
思った以上に、リャンハの感情の振れ幅が少ないなと感じました。リャンハにはクールで真剣な部分とおどけた振る舞いをする部分という、異なる二つの側面があるのですが、演じてみると急に切り替わるというよりも、細かく刻んで切り替えていくような感覚があったんです。
――より細かなニュアンスづけが必要になるということですか?
そうですね。最初、おどけるシーンをコミカルに演じてみたら、音響監督さんから「おどけた感じを少し抑えてください」と、ディレクションをいただいたんです。コミカルすぎるのも違うのかと、そのときに気づくことができて。今も、そのさじ加減を探っているような状態です。
けっして、お調子者というわけではないんですよね。
そうそう、お調子者ではなく飄々としているのがリャンハなんです。
でも、その飄々としているところも含めて、リャンハはすべてを計算して行動しているようにも見えたんです。この場面ならこういう対応をしておこう……という感じで。ある意味、リャンハ自身も何かを演じているところがあるのかなと感じました。
――では、大西さんはいかがですか?
シャトーも感情の起伏が少ない子なので、なるべくクールにクールにと思いながら演じています。ただ、静かなキャラクターを演じるときに、ちゃんと感情があるはずなのにクールだからといって感情を抑えようとすると、知らないうちにただセリフを読んでいるだけののっぺりしたお芝居になってしまうことがあるんです。 そうならないよう意識的に感情を乗せてみるのですが、そうすると今度は「ちょっと抑えてください」と、下野さんと同じディレクションをいただくことがあって。シャトーも案配を探るのが大変です。
無感情ではない、でも感情を込めすぎてもいけないという、本当にちょうどいいところを狙っていかないといけないから、お互い大変だよね。
二人で感情のつまみを調整しながら、一緒に演じているような状態です(笑)。
――第2話では新キャラクターのホーが登場しました。
“ヤバいヤツ”が来たね(笑)。
来ましたね(笑)。
シャトーからすれば、本当にいきなりだったもんね。普通だったらシャトーみたいに、いろいろと対処できないと思いますよ。
車を運転していて、いきなりバイクに銃撃されるなんて恐怖しかないです。しかも頑張って対処したのに、まさか崖から転落するなんて……。よく生きていたなと安心しました。
でも、ホーが登場したことで、作品全体に流れる感情に大きな起伏が出たなと感じました。
確かに、ホーはリャンハに落とし前をつけさせようとしている、目的が明確なキャラクターですからね。強い感情に突き動かされているからこそ、よりドラマチックになった印象があります。それから、ホーが登場して少しホッとしたんです。
――それはどうしてでしょうか?
とにかくこの作品のアフレコ現場は人が少ないんです。登場人物もけっして多いわけではなく、セリフも全体的に少なめなので、特に第1話は、私史上一番静かなアフレコだったかもなと感じたくらいでした。もちろん、皆さんがご覧になるときは音楽や効果音がついているので、静かすぎるということはないと思いますが、純粋に登場人物が一人増えたことで、作品も現場もさらに熱量が上がったような気がしました。
「ホッとする」という意味では、やっぱり社長とジムの存在は大きいですね。本当に同じ世界線の人かなと思うくらい、癒し成分が強くて。
二人ともかわいらしいんです。
ギャグっぽい描かれ方も多いしね。シャトーに振り回されていますが、めげずに頑張ってほしいです。
――第2話後半では、シャトーとリャンハがモーテルの一室で過ごすシーンもありました。
セリフとしてあったわけではないのですが、リャンハはシャトーに対して優しさや愛おしさをもって接しているんだなと感じました。彼の表情からも伝わってきましたし、その意味では、第1話よりもリャンハの感情がわかりやすく描かれていたと思います。
私はすごくテンション高く演じられました!
え、落ち着いたシーンだと思ったけど?(笑)
もちろん、シャトーとしてはクールに演じましたよ。でも、大西沙織としては「目の前にリャンハがいる~!」と、心の中で興奮していました(笑)。
――(笑)。ほかに気になったシーンはありますか?
第1話も含めて、全体的にシャトーとリャンハの距離が近くて、リャンハのささやきが意外と多いんです。ただ、男性キャラクターが女性に何かをささやくときって、どこか甘いニュアンスが含まれていることが多いですよね?
うんうん。
でも、リャンハにはその“甘さ”がないんです。それがリャンハの特徴なのかなと思いました。
確かに、 その“甘さ”のニュアンスは入れられなかった。入れてみようかなという思いはあるんです。でも、リャンハの場合はどうしても「違うな」と思ってしまって……。
もちろん、リャンハの気持ちがちょっと緩んだかなと感じるときはあるんです。でも、その緩み方のベクトルが恋人を相手にした緩み方ではなく、何か子どもを安心させるかのようなベクトルだったので、それがすごく素敵でした。
いやぁ、ありがたい限りです。
――では、『殺し愛』のタイトルにかけまして、お二人の「最近、愛してやまないもの」を教えていただけますか?
私は、飼っている猫ちゃんです。スコティッシュ・フォールドの男の子で、むぎまるといいます。もうかわいくて、かわいくて仕方ないですね。人によっては子猫の頃が一番かわいいと言う方もいらっしゃると思いますが、全然そんなことはなくて、毎日が一番かわいいんです。いつか皆さんにも見ていただきたい! ただ、私はSNSをまったくやっていないので、どこかで連載企画があったらよろしくお願いします!
まさかの営業!?(笑) そうですね……僕が最近、心から愛して止まないのは、健康な体と睡眠です。昨年は、とにかく体をいたわること、丈夫であることが大事だなと実感させられた1年でしたから。
――睡眠のゴールデンタイムは、午後10時から午前2時とよく言われますよね。そういうのを意識するんですか?
美容、ダイエット関係でよく言われるよね。でも、ゴールデンタイムに関係なく、単純に体を休ませることが大事だなと思うようになったんです。ちゃんと寝ないとダメだと肝に銘じています。
――ありがとうございます。では、第3話以降の見どころを聞かせてください。
まずは第2話に登場したホーとリャンハがどのように出会うのか。そして、過去にどのような因縁があったのか。明かされていく真相を楽しみにしていただきつつ、その因縁に巻き込まれたシャトーの行動にも期待していただけたら嬉しいです。もちろん、リャンハとシャトーの関係も少しずつ変化していくので、その変化も楽しみにしていてください。
シャトーとしては、ところどころに出てくるシャトーの子ども時代ですね。シャトーの過去はいったい何を意味しているのか、今のシャトーやリャンハの関係性に関わってくるのか。ぜひ注目してください。また今後、新しいキャラクターもどんどん登場しますので、どんな活躍を見せてくれるのか期待してお待ちください。よろしくお願いします!
複雑すぎるW主人公の関係性が面白い!

クールさの中に垣間見える、か弱さ……そのギャップが魅力!
――ついに、「殺し愛」の第1話が放送されました。まず、最初に作品に触れたときの感想から聞かせていただけますか?
オーディションきっかけで原作を読ませていただいたのですが、私に刺さりまくった作品でした! 刺さった部分はいろいろあるのですが、大きなところで言うと、いわゆる「ケンカップル」(ケンカばかりしているけれど、ちゃんと付き合っている)っぽいところ。それにシャトーとリャンハの関係性が近い印象だったんです。 「敵対している二人だけど、でも、この関係……どうなるんだろう!?」と、ドキドキしてしまって。 これは私がシャトーを演じるしかないと思って、気合いを入れてオーディションに挑みました。
第1話のアフレコが始まる前に、いきなり作品について熱弁されました。 僕、インタビュアーじゃないのに(笑)。
一気に作品が大好きになってしまって。 受かったのが嬉しかったんです。
――熱意が伝わってきます。下野さんはいかがでしょうか?
面白いなと思ったのが、キャラクターの関係値と物語そのもののミステリアスさですね。 リャンハもシャトーも振れ幅はありますが、どちらも基本的にはクール。 クールとクールというところで、凸凹した関係といってもどこまで振り切るのか、どういう関係値を築いていくのか、それを見守る面白さがありました。 また、それとは別にリャンハとシャトーの過去、そこに関わってくる人物と、みんな謎だらけなんです。 それを紐解く楽しさがありつつ、実はまだ原作の第3巻しか読んでないので……。
――そうだったんですね。
僕の場合は、オーディションの段階では基本的に原作は読まないんです。 落ちたときに悔しいので(笑)。 でも、ありがたいことにリャンハ役をいただいて、原作を買おうと思ったら、人気作なので行くところ行くところに全然なくて。
悲しい!
僕は電子書籍よりも紙派なので、どうしても書店で手に入れたいんですよね。 第2話のアフレコ時点で手に入ったのは、第3巻だけ('22年1月現在、アフレコはすべて終了)。 だから、中途半端に第3巻だけ読んでいます(笑)。
(笑)。
資料はいただいていますし、台本や映像もあるので問題はないんですが、アフレコ中になんとか原作を揃えたいです。
――お二人が感じたシャトーの魅力についても聞かせていただけますか?
ただ強いだけではなく、弱い部分もあるところです。 クールで腕も立つ賞金稼ぎですが、たまにピンチに陥ってリャンハに助けてもらうことがあるんです。 強がりつつも、知らず知らずのうちにリャンハを頼っている、そのギャップに魅力を感じます。
そうそう。この作品は殺伐としてる瞬間と、ちょっとコメディチックになる瞬間があって、コメディよりのシャトーがかわいいんです。 あと、ふいに感じられる「儚さ」もいいですよね。
わかります!
アフレコをしていて、どこか影を背負った少女という印象を受けたんです。 僕はあまりクールな女性キャラクターにハマることがないんですが、シャトーは儚さやかわいらしさをそっと見せてくれるからか、グッときてしまって。
あら~。
まさに大西が言っていた、ギャップ萌えというやつですね。 僕、ギャップ萌えに弱いんです。
嬉しい! でも、シャトーがギャップを見せてくれるのは、リャンハがいるからこそなんですよね。 リャンハに出会ったことでペースを乱され、素が出てしまうんです。 腕も立つし、大人ぶっているけれど、根は純粋なまま大人になってしまったような、そういう女性なのかなと思います。
――では、リャンハについてはいかがでしょうか?
リャンハのように表面上は飄々としつつも、実はクール……といったキャラクターって、あまり演じたことがなかったので、緊張しました。 実際にアフレコをしてみると、掴みどころがなくて改めて難しいキャラクターだなと思いました。
アフレコ現場でもおっしゃっていましたよね。
現時点だとリャンハは基本的に感情を表に出さないですし、表に出した瞬間があっても、どういう思いで出しているのか、それは本当の感情なのか、確信が持てないんです。 クールなように見えて、シャトーの前ではおどけた雰囲気も出している。でも、すごく好きなのかというと、そうとも言い切れない。 彼の真意はどこにあるのか、ぜひ皆さんにも注目していただきたいですね。
私の、リャンハの「ヤバい、好き!ポイント」を語らせていただくと、ときどき番犬のような表情を見せるんです。 なんでしょう、シャトーを守る番犬のような顔をするときがあって……。
熱く語るね~(笑)。
いや、もうそれがすごくいいんですよ! 先ほど下野さんがおっしゃったみたいに、確かに普段は飄々としていて掴みどころがないんです。 でも、シャトーがピンチになると、鋭い目つきで、何かしらの感情が見えて。 私は、「リャンハ……」(口元を押さえながら)ってなるんです。
(笑)。
アニメはこの先どうなるのかわかりませんが、個人的にはリャンハの首輪を握っているのはシャトーなのではと思っています。
――実はシャトーがリードしている?
単純にリードしているというよりも、自覚はないけどリードしている感じになっていたらいいなという理想です。 自覚のなさ、というのがポイントです! ……ただのファンが語っているみたいですけど、大丈夫ですか?
大丈夫、大丈夫、作品愛が伝わってくるよ。
――実際にアフレコで掛け合いをされての感触はいかがでしたか?
シャトー役に決まったときに、どうしてもリャンハ役が気になったので、事務所に「リャンハ役はどなたがやられるんですか?」と聞いたんです。 「下野さん」と言われて「ウソだ~‼」、って思いました。
事務所の後輩じゃなかったら、怒ってますよ(笑)。
(笑)。でも、アフレコが始まったら、リャンハは下野さんだなと思うようになったんです。 下野さんの色も出つつ、リャンハにしっかり寄り添われていて説得力を感じました。
確かに、そういうことはありますよね。 シャトーも大西さんと全然違うじゃないですか?
結構、素の自分と真逆の役をやらせていただくことが多くて、シャトーも例に漏れず、私とは全然性格の違うキャラクターですね。
うん。大西は休憩時間、喋らないときがないよね?
ずっと喋ってますからね(笑)。
もちろん、大西ならシャトーを演じられるだろうなと思っていました。 でも、想像以上に新鮮なシャトーで驚いたんです。 先ほどもお話ししたとおり、シャトーはクールさの中にどこか少女の面影が感じられるので、リャンハよりずっと年下のイメージがあったんです。 大西さんはどう演じるのかなと思ったら、「クールな少女」とは別の、でもちょうどいい案配のシャトーで、そのお芝居が自然と入ってきました。
嬉しいです! アフレコを通して、お互いがお互いに納得していったのかもしれないですね。
――では、第1話を振り返られての好きなシーンや印象に残っているシーンなどを教えていただけますか?
リャンハとシャトーのやりとりはどれも印象的で、特にAパートの後半、公園のカフェのシーンはリャンハの見方がかなり変わりました。 オーディションのときは、今よりもクールな部分と飄々とした部分にもう少し色をつけていて、若干、振れ幅を大きくしていました。 でも、そのシーンを演じて、振れ幅は少ないほうがいいだろうと思ったんです。 たんにシャトーのことが好きというだけではない、何かほかの目的があるのかもしれない、と。
映像がほぼできあがっているのもお芝居のイメージがしやすいのでありがたいですよね。
そうなんです。表情もわかりやすくて、リャンハも何かを背負っていることが伝わってきました。 それこそ、公園のシーンでは大好きなシャトーと会話をしているのに、なぜか顔に陰がかかるんです。 シャトーに好意があるのは間違いなさそうだけど、その感情は一体なんなのか。 リャンハの抱えているものが画からも漂ってきて、演じやすさもありつつ、新たに探るべきことも増えたなと感じています。
私もまさにそのシーンが印象に残っています。 テーブルを蹴り上げたシャトーを押さえ込むリャンハが素敵で……ちょっと萌えました。 「殺し愛」の原作は、リャンハがシャトーを力づくで止めようとするけれど、傷つけないようにギリギリを攻めるという場面が結構あるので、この先の展開も楽しみです。